T.nakade C.G フレットバリ取りのご依頼

クラシックギターのフレットのバリ取りのご依頼です。


昨今、多くのご家庭ではエアコンで暖を取られていると思います。加湿器を導入してもお部屋の湿度は40%ぐらいではないでしょうか?乾燥しすぎてませんか?でもあまり神経質になるのもどうかな?とも思ってます。自分と同じように生活してめぐる季節をすごして身近に寄り添っていてくれればそれでいいのではないでしょうか。人が風邪をひくようにギターも調子が悪くなることもあると思います。

 

中出敏彦氏による1974年製のギターです。側板、裏板はハカランダです。

画像ではわかりにくいですがBODYの塗装はシェラック(セラック)塗装です。セラックとはカイガラムシが分泌する虫体被覆物を精製した樹脂状の物質です。ラッカーがまだ無かった頃、このセラックを使って塗装をしていました。虫が出す分泌物です。と書くとちょっと引かれるかたもいらっしゃると思いますが。精製されたものは琥珀色のザラメ糖のちょと粗いかんじのものです。

作業はとてつもなく気の遠くなる工程です。時間と心に余裕がないと・・・。

アルコール:セラック=5:1 の比率で溶かします。つまり、塗装膜の5/6は蒸発すると言う具合です。詳細な工程はここでは省略しますが、簡単に言うと塗りと研磨を200回ぐらい繰り返します。乾燥に最低1日必要ですので・・・そういうことです。表板は概ねスプールスですので目止めはしませんが側板、裏板がローズウッドの場合、導管の目止めが必要です。パミスを使って目止めしますがこれも数回繰り返します。乾燥が不充分な状態で作業を進めると溶けてきますので時間がかかります。ラッカーが無かった頃はこうやって時間をかけて作っていたと思うとなんだか静かにゆっくりと時間が流れている中で落ち着いた気持ちで気が散ることもなくそれがあたりまえだったことがうらやましくも思います。

この度はリペアのご依頼をいただき誠にありがとうございました。

2023年03月08日