Fender ストラトキャスター リフレット(EVO-Gold)のご依頼
Fender ストラトキャスター リフレット(EVO-Gold)のご依頼です。合わせてアーミングの際の音程ズレの対策を行いました。
リペア内容 (今回は多彩です)
1.リフレット(フレットの交換作業)
フレットは EVO-Gold を使用させていただきました。硬度 HV=250 でステンレス(HV=300)よりは柔らかくニッケルシルバーとステンレスの中間ですが十分に硬い部類で耐久性も高い素材です。メーカーはJescarです。ニッケルが使用されていないので素材色はゴールドです。画像ではわかりにくいですが赤味のあるゴールドです。音質はステンレスのような硬く、カドのあるギラギラ感はありません。音の切れ味も柔らかい感じです。どちらかというとニッケルシルバーに近いです。耐久性があってニッケルシルバーのような音色、弾きごこちといった感じです。ステンレスとニッケルシルバーのいいとこ取りってかんじですね。
難点は作業の難易度が高いというところです。形状記憶合金とは言いませんが近い性質があります。フレットを打つ際に指板のR(アール)に対してフレットにもアールを付けて打ちます。これはフレットが浮ないようにするためです。いちおうアールは付きますが曲げ方に工夫(技)が必要です。又、Jescar製のフレットはタングの巾もやや細めなので少し加工も必要です。フレット打ちの際は凹凸を極力なくし、浮きも無いように気を配りながら行いますが、今回はいつもよりも慎重に作業しました。
2.ナット交換
ナットの素材は今回、TUSQ(タスク:人工象牙) を使用させていただきました。TUSQは弦振動の伝達が象牙のように効率よく高音から低音まで倍音成分を含んでいるという特徴があります。くわえて潤滑性がよくチューニングが安定するという一面もあります。お客様からアーミング後の音程のズレを少なくしたいという要望があり、弦が擦れ合う箇所を改善する目的で今回、TUSQを使用しました。音質に関してはアコギで試された方は高音の変化がわかりやすかったと思います。潤滑性はエレキのほうがチョーキングの違いでわかりやすいと思います。あえて難点をいうと経年変化で茶色くなることですね。外観上ですね。
3.ストリング・リティナーの交換
Fenderの純正にこだわる方にはちょっとまったかもしれませんが、弦との接触面積の少ない形状のタイプに変更させていただきました。これもアーミングにより音程ズレ対策のひとつです。摩擦している箇所の改善です。
4.パワースプリングの交換
スプリングの個体は交換前よりも強いものに換えましたがアーミングの感触は柔らかくなりました。目的は音程の安定です。ブリッジの調整にも係わります。
5.ブリッジ調整
アーミング後のイナーシャブロックの位置復帰が安定するように調整します。
6.弦高調整
7.オクターブ調整
8.ピックアップの高さ調整
9.電装品のチェック(ガリなど)
10.弦交換 (必要以上にポストに巻き付けないようにしています)
今回のご要望は 1.アーミング時の音程の安定 2.音の切れをはっきりよくしたいという内容でした。アーミングに関しては音程の安定がとてもよくなりました。押し弦している指の感触やチューニングメーターの動きで確認できました。若干、アーミングの感触が柔らかくなりました。音の切れに関しては感性にもよりますがフレットによる変化は少なかったように思えます。このあたりも EVO-Gold はニッケルシルバーに近いです。
カッティングを好まれるということで音の切れに関しての拘りも持たれていて、他のギターでステンレスフレットにも触れていただき、感触を確認していただきながら相談も重ねていただくことができました。
この度はリペアのご依頼をいただき又、お店にも何度か足を運んでいただき誠にありがとうございました。